下位1%の才能

 

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ひろゆき「なんだろう……その虚言癖というか、嘘つきというか、ホラ吹きというか、小池百合子というか、大本営発表というか、嘘をたくさん言ってる人なんですけど……」

 

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ひろゆき「一般にはイヨク君と呼ばれてるんですけどぉ。」

 

 

さて、今回も豪華なゲスト、ひろゆきさんにお越しいただきました!改めまして、ファッションチェックのお時間がやってまいりました!

 

 今回見ていくブサメンは皆もご存知、イヨク君だぁ!

 イヤぁ〜、イヨク君よ。俺は彼が大好きだし、彼と仲良しなんだけどな。とは言いつつも……話を周りから聞くと、そりゃあ変な情報が出るわ出るわ。これには流石の私も「大変申し訳御座いません。厳しく改善指導致します。」と平謝り。

 

それでは彼の服装を見ていこう。

 

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 まず、彼のこのファッションセンスは一体何がどうなっているのだろうか?

 

何とそこには波瀾万丈の彼の人生ドラマが……あるのである。

 

  確かに、私を始め多くのネット民はノンファッションセンスだ。イヨク君もその例外じゃない。だが彼以外の皆を見てようか。高校や中学の打ち上げで恥ずかしい思いをしたり、大学に入って大学デビューをしようと垢抜けを頑張ったり、まあ誰しも色々と経験を積んでいく中で多少なりともファッションセンスは改善されていくわけだ……。が、しかし、そう、何を隠そう彼はそんな経験をするわけがない、したことが無い。何故なら彼は中卒である。いや正確には高認はあるとか、TOYOTA期間工してたとか、偏差値30くらいの高校の見学に行ってたとかは一旦どうでもいい。まあ、豊●高専・立●館大学の退学(本人曰く)は明白な嘘で他が事実だとしても、彼は学校や職場で人間関係を築かず、高等教育を受けず、会社に貢献もせず、何もしっかりせずに大人になったのは本当だ……。彼は社会常識や一般教養を学ぶことなく大人になってしまった。彼は子どもおじさんなのである。ファッションセンスも例外ではなく、悲しい事にネットと元カノ(彼はネット女にモテる)からの情報に偏っている……。

 

 

 さて、そんな彼は、正しく生きた化石シーラカンスなのである。デボン紀からネットの冷たく暗い海で過ごしてきた。それが浜辺のギャルやサーファーに憧れて真似をしようとしたらこうも悲惨になるに決まっている。彼はデボン紀から本来通るべき文明開化を通り越し、突然やって来たタイムトラベラーなのである。ギョギョッと「おっ!このボロボロのズボンは可愛いぞ!」なんて調子でやっていたら未確認恐竜ケボザウルスの誕生である。

 

f:id:Mokkey_D_Tako:20230811221507j:image↑左側の着ぐるみはイヨクさんのコスプレをしたマスコットキャラクター“ケボ”だ。確かに可愛くて愛着が湧く。

 

 さて、彼の哀しい過去はさておき、現在の彼のファッションを分析していこう。端的に言うと、ごちゃごちゃしてうるさい。「伝説のポケモン揃えてみた」「ラーメン二郎にカレーとハンバーグ乗っけてみた」みたいな煩さである。好きなの何でも使っていいのは、小学校のポケモンバトルとsyamuさんのオリジナルメニューだけなんだって……。

 加えて、まあオタク臭いこと。平成のサブカル系というコンセプトは伝わるにしても、ボーダーは去年でブーム過ぎたし、トー横のキショイオタクしか着てない。Tシャツはまだ良いにしてもダメージ受けすぎのズボン。まるで樹液が滴る椚の木。カブトムシは臭さで死んでしまうかもしれないが。股下の短さのせいで短足が強調。肩がけカバン(ポーチかもしれない)なんて今どき使うのは撮り鉄転売ヤーくらいだ。あからさまな厚底靴から写真だけでも「あっ、低身長なんだ」と分かってしまう。強キャラを揃えたはずが、弱点丸出しの全裸状態である。

 

 全体としては、派手髪と相まってホストやメンチカ、歌い手系に憧れてる痛いブスの見本そのまんまである。非常に見ていられない。そのセンスは三流以下、いや数億年前。やはりデボン紀の魚には令和の多様性は早過ぎたのである。

 

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↑目立ち過ぎて人が溢れるミナミですらすぐに見つかる。シーラカンスは令和の温暖で華やかな海には適さない。

 

狂いについて

 狂うとは、理性の箍が外れることである。その点において、狂う人間というのは特段限定されない。人は誰しも理性を持ち、他方で誰しも様々な要因でその理性を喪う。狂うことは、人生において避けては通れない道の1つなのである。

 

 一つには、機能的な狂いがある。脳の機能が欠損、或いは異常が発生した場合である。アルツハイマー病かもしれないし、適応障害鬱病と言った精神疾患かもしれない。これらは老いや苦難と言った、運命的な苦難や試練、人生の通過点に起き得る事柄である。しかし、上手く生きる事ができれば、これらは無事見逃す事ができる。

 二つには、情緒的な狂いだ。一番有名なのは、色恋沙汰だろう。普段真面目で遵法意識がある人でさえも、ふた心のあるパートナーを刺殺する事は屡々ある。また、人間は感情を抑え込みすぎたり、逆に発散し過ぎたりする事でなんらかの狂いが見られることがある。所謂、ストレスである。これらの事柄は、経験や学習の中で自然と対処の仕方を身につける。狂いと言っても全ての理性が狂ったわけでなく、ただ特定の認知機能や価値観を少し曲げて物事を対処しようとした結果として、理性の抑えを一時的に外さざるを得なかったに過ぎない。部分的な狂いであり、熱しやすく冷めやすい特徴を持つ。

 最後に、人はふとした日常の微かな事象が狂いに繋がる事もある事を挙げねばなるまい。志賀直哉の『剃刀』という短編小説がある。このパターンの狂いを、最も端的に表現した作品である。

 『剃刀』は麻布六本木の床屋の店主である芳三郎の話である。芳三郎は、一回も剃刀でミスをした事なない剃刀の達人であった。しかし、その日彼は風邪で熱を出していて非常に具合が悪く、色々と調子が良くなかった。彼は体調の悪いのを押して、ある若者の客の毛剃りを行う。その途中、彼は咽の柔らかい部分がどうも上手く剃れず、苛立ち始める。彼は剃刀の達人なので完璧に剃りたいという気持ちから、もういっそ皮ごと削ぎたいとさえ思い始めてしまう。そこから狂い始めるのである。

 

 疲れ切った芳三郎は居ても起っても居られなかった。総ての関節に毒でも注されたかのような心持がしている。何もかも投げ出してそのまま其処へ転げたいような気分になった。もうよそう! こう彼は何編思ったか知れない。然し惰性的に依然こだわって居た。

 

(中略)

 

この時彼には一種の荒々しい感情が起った。 

 嘗て客の顔を傷つけた事のなかった芳三郎には、この感情が非常な強さで迫って来た。呼吸は段々忙しくなる。彼の全身全心は全く傷(芳三郎は若者の咽の皮膚を少し切ってしまった)に吸い込まれたように見えた。今はどうにもそれに打ち克つ事が出来なくなった。……彼は剃刀を逆手に持ちかえるといきなりぐいと咽をやった。

 

『剃刀』 志賀直哉 明治四十三・六月

 

 芳三郎は二つの原因で狂った。一つは、完璧主義である。彼の「絶対にミスをしない」という主義は、ミスをした自分の首を絞めるロジックになってしまった。二つには、風邪の熱である。彼は熱で手が震え(そう書いてある)、意識が朦朧としていた。その状態であっても完璧を追求するあまり、理性を守っていたものが壊れてしまったのである。

 熱で狂ったと言えば、機能的な狂いに見えなくもないが、機能的な狂いというのは脳の機能障害の話であり、ここでの熱というのは思考判断がズレる要因になったに過ぎない。あくまでも狂ったのは、彼の築き上げてきた完璧というブランドであったり、風邪体調不良であったり、偶然客としてきた若者であったり、何かと日常的な要因なのである。人はこうした日常的な要因によってさえも狂い、人を殺めたり禁忌を犯したりしてしまう。


 これらの狂いは全て人生の中で必ずある。これらを耐えられない者から脱落していく、という弱肉強食の世界が人生である。

  全ての狂いは一瞬である。しかし、一方で一瞬に見えるの全ての狂いも、その前には本人が意識していないだけで狂いを溜める時間がある。結局、狂いとは、積み重ねや運命と言った前から用意されたものの結果の一つに過ぎない。それならば防ぎようがない。しかし、我々に必要なのは備えではなく、狂いを耐える力である。まずは、誰しも狂う事を学べばなるまい。東大を出ようが、金持ちの子どもになろうが、狂う時は同じである。何で狂うかすらも当人には観測出来ず、気づかぬ間に狂いのゲージは溜められている。狂いとは平等である。

 

 狂いの対処方法として、先に狂っておくことがある。特に学生という期間は、時間もあれば、ここでの失敗は人生に大きく左右されない確率も高い。学生の間に狂い、狂いへの耐性をつけておく。私が言える狂いへの提言がこれだけである。

 

 最後になるが、まだ上手く言語化出来ていないにも関わらず、今回拙くも投稿した。今後上手く「狂い」について体系化出来たら、改めて投稿するつもりである。今回は論理や分析、言葉の当てはめに、少々のミスがあると書いていながら思った次第であるから、あまり強く共感することはないように。寧ろ批判を歓迎している。

イエローモンキー

 

 山梨のとある田舎町に引っ越して来たのは、つい4日前の事だった。何も分からない私に手取り足取り教えてくれたのは、近所の「イエローモンキー」という喫茶店を営む山壁さんだった。週末はここのスーパーに行くと良いだとか、道の駅のこの野菜が美味しいだとか何でも教えてくれた。改めて、田舎の温かさを知れた。引っ越しの整理が着いた頃に、「俺の店に来ないか?今回はタダで出すよ。」と山壁さんが誘ってくれた。妻と二人でお邪魔することにした。

 

 「名前の由来はね、昔、海外あっちこっち飛び回ってた頃にパリで『イエローモンキーが!』って言われたのが由来やね。悔しさと差別の実感が忘れられなくてね。ついで言うと、うちで提供する肉は全部黄色い猿の肉やからね。あぁ!これはキマリだって思った訳よ。」

 

 山壁さんの語りを聴きながら食べる特製イエローモンキーカレーは大変美味だった。まず猿の肉というのが少し硬いのだけれど、しっかりと味が染みていてなんとも言えない刺激がある。

 

 「ワニもカエルもイノシシも食べたけど、ダントツで美味しいわ猿の肉。」

 

妻の一絵が手で口を抑えながら言った。山壁さんも満足気だった。

 

 「また来なよ。次はちゃんと金取るからな!ガハハ!」

 

 僕らはイエローモンキーを後にした。後ろを振り返ると、山壁さんと、その奥さん───どうも街の葬儀屋を経営している───とベトナム人の店員さんが手を振って送迎してくれた。

 

 家に戻った後、我々はすぐに身支度をして車に乗った。

 

 「一絵、肉のサンプルは取れたか?」

 

 「はい、取れましたよ。そういえば猛さんは肉食べてましたけど、気分大丈夫ですか?私は全部吐き出しましたけど……。」

 

 「大丈夫だ。少し吐き気はするが……。それは矢作さんのとこに送る。身辺調査と証拠は大体揃った。地元の長野県警と下にいる山部さん達に合流して突入するぞ。」

 

 「了解。」

 

 二人は車に乗って下山した。

 

 

─────────────────────

 

 「行ったか?」

 

山壁は車が畑の小道の先にある、アカマツの林の中に消えたのを確認した。「まったく、なんでこんな所に人が引っ越してくんだよ……。」と思いながら、裏の作業所に今朝妻が届けてくれた食材の解体を始めた。

 ベトナム人のミンさんは包丁捌きがとてもうまく、骨と皮を綺麗に剥いでくれた。あとは山壁が調理用のサイズにカットして、冷蔵庫に寝かすだけだった。

 

 「ふぅ、下準備終了。ミン、風呂入ってきていいぞ。」

 

 「エンリョナク」

 

山壁は手を洗って、畑の方に目をやった。そろそろレタスが収穫できるはずだ。そしたら、夏野菜のサラダをメニューに加えられる。

 そう思った矢先、アカマツの林から赤いサイレン鳴らした車や黒のクラウンなどが数台来ているではないか!

 

 「清子!急いで証拠を隠滅しろ!ミン!早くこの冷蔵庫のやつを始末するぞ!」

 

───しかし、全てがもう遅かった。

 

 2023年8月6日、山梨県◎市で市内の霊安室に安置されている死体奪った他、多数人を誘拐殺人し、集めた死体を『黄色い猿の肉』として提供していた喫茶店イエロー・モンキーの店主山壁哲人及びその授業員と妻が死体損壊罪含めその他の容疑で逮捕された。

 報道によると、山壁氏は若い頃に趣味の海外旅行であっちこっちに飛び回っていた。その中でニューギニアの人肉文化に触れ、「人肉食で飲食店をやる」ということを発案したという。妻やミン氏は海外旅行の中で偶然出会った友人であり、また彼らも日常的に人肉を食していた。彼らは容疑を認めており、事件の究明と罪の執行が待たれる。

道徳があるとは

 

 道徳という言葉がある。一般に「道徳がある」といった場合、人を思いやる心があるだとか優しい心があると言ったような意味合いで使われる。具体的には、電車で老人や妊婦に席を譲ったり、傷ついている人を助けようとしたり、或いは日常生活でもより平易な現場、つまり友人や家族との会話で微かな心遣いを出来る事に対しても言う。

 その様な道徳観というのは、自然法的なものもあれば、学校や家庭の様な教育の過程で学習するものもある。特に、我が国の小学校では「道徳」の授業がある。

 

 「道徳」の授業に関して、私が思い出した事がある。

 その日の授業は、『人を傷つけてしまう言葉をいくつか挙げて、それをどんな言葉に言い換えたら良いのか』というテーマだった。例えば、「うるさい」という言葉を「元気がいっぱい」に言い換える、といったような感じだ。何故その授業を思い出したのかと言うと、普段から悪口をよく言う人間ほど挙手して発言していたのだ。勿論、いじめっ子の様な子の中には、クラスで発言力を持つ子が多いのだから当然ではある。が、その日はそれにしても多かったし、当時の私は子どもながらに何か道徳という言葉の歪さに勘づいたに違いなかった。そんなに挙手して、悪口を“良い”言葉に変えられる賢さと真面目さがあるのならば、どうして普段からしないのかと思ってしまったのだ。

 

 「お前性格悪いよな」と言うと、「いやいや俺は真面目だし優しいから」とよく返ってくる。その通り、君は優しく真面目なのだ。しかし、優しい人ほど、真面目な人ほど、性格が悪い。

 「人を傷つける言葉が言える」と言うのは、相手の欠点や弱点をすぐ見抜ける能力である。多くの人はここで理解を止めている。しかし、「相手の欠点や弱点をすぐ見抜ける力があり、それを傷つける言葉に変換できる」の先には、「その傷つける言葉はよくないので、“良い言葉”に変換する」という第二段階がある。道徳の授業で気付いた違和感とは、つまるところ、優しさは悪意の裏返しという矛盾を孕んだ道徳であった。あの道徳の授業の同級生達は、普段は第一段階で止めてイジメたり悪口を言ったりして、一方で点数を稼ぐ為に「道徳」の授業では第二段階まで進めていたというわけだ。

 こうした経験は無いだろうか。前に会った時より15kg太ってしまったのに、「え、〇〇って痩せてるよね」と言われたら「社交辞令はいらないから!」と思うだろう。社交辞令は第二段階の部分が弱く、第一段階の部分が見え透いている言葉なのだ。

 

 実は、多くの人はこれらの仕組みを理解して実践している。読者の一部は妙に納得したものもいるだろうし、大半はなんだそんな事かと思っていると思う。私はこれを15歳の時に気付いた。だが、そこで止めておけばいいものを、その先に行ってしまったのが松本少年であった。「良い言葉の裏には悪意がある」、つまりどんなに善の言葉も可逆的に悪口にできる事に気付いてしまったのだ。第二段階の言葉を第一段階に還元しようというのだ。

 「勉強が出来る」は「勉強しか出来ない」と言えるし、「可愛い」は「顔“は”」と付けるだけで攻撃になる。古今東西、言葉で戦う職があるように、言葉は諸刃の剣だ。私はTwitterに毒されて随分長いこと悪意ばかり言っていた。そろそろひっくり返して「道徳」的になるべきかもしれない。

 

イーロン・マスクについて思うこと

 

 

 イーロン・マスクって結構叩かれてるけど、起業家・発明家としては凄い人だと僕思うんですよね。そもそも、イーロン・マスクが日本で叩かれるようになったのって、Twitter社のCEOになって(我々ユーザーが好まない)改変をするようになってからではないでしょうか。

 

 

 

 

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 めんどくさいのでソース出しませんけど、こういう言説に溢れてた気がします(気になる人は“イーロン・マスク until:2022-12-05”とかで検索してみてくれ)。

 僕の周りも、「凍結が解除される」だとか「TLからネット左翼が消える」だとかでかなり盛り上がった記憶があります。が、彼らのこうした淡い期待はほぼ現実になることはありませんでした。と言っても、トレンドの下の部分にハフポストや朝日のルポタージュや記事は実際に表示されなくなりましたし、一部ユーザーのアカウントは復活しました(こんなの「天皇即位して恩赦になった」みたいなレベルやろwとしか思いませんが)。

 

 僕はイーロンがCEOになることに初めから批判的でした。イーロンはあまりにも政治思想が偏り過ぎています。後述しますが、イーロンの様なベンチャー志向の人間は、そもそもTwitterのCEOには不向きだからです。

 API有料化やTwitter blueの導入、「あなたへのオススメ」の固定化、インプレッションの表示、スペース機能やTwitterが一時期使用不可になるなど、彼の改悪は枚挙に暇がありませんし、彼はTwitterのCEOになるべきではありませんでした。が、僕はそれでもある意味では彼は天才だと思います。ただ天才と言っても彼の才能はジェネラリストではなく、スペシャリストであり、また冒険主義的過ぎると思うわけです(彼の半生についてはwikiでもなんでも見てくれ。まあ凄いから)。

 少し前から今のTwitterは───少なくとも日本では──、情報が氾濫していた事が大きな問題であったように思えます。さらに言えば、Twitterのユーザーの多くは、どちらかと言うと保守的であり、しかし人と繋がりたいと考えています。悪く言えば、引っ込み思案なのにお喋りな面倒臭い奴らです。

 ユーザーからすれば、改変は求めていません。彼らは住処が極端に変容することを拒みますし、寧ろ情報が氾濫し、求めていない情報が目に入るこの現状を止めて欲しいと考えていました。例えば、フェミニズムだとかSDGsの様なリベラル的な情報は、ユーザーからすれば目を覆いたくなる話でした。が、情報が氾濫した今、フォローしてなくても彼らの情報は流れる訳です。

 一応、イーロンはこれらの問題を解決しました。API有料化やあなたへのおすすめの固定化は、ある意味で「自分らが見たいと思ってる情報」がアルゴリズムで流れるからです。しかし、これがツイッターユーザーの耐えられない「住処の変容」だったわけです。

 

  変容を許さず、常に安定した設備を求める。これって、infrastructureの話だと思うんですよね。別に、新たなイノベーションを追い求めるベンチャー的カリスマ性は今のTwitterに必要なく、安定した公共空間の提供が必要な訳です。Twitterは最早社会インフラの一つであり、謂わば公民館だとか学校だとか駅みたいな存在だと思いますから、一々何か変わっても不便なだけです。そうなると利益を出すのが少し難しい気がしますが、metaやGoogleAmazonの様な既に社会インフラと化しているメガベンチャーでは莫大な利益が得られています。Twitterだけが何故赤字だったのか、僕は詳しくありませんが、少なくとも社会インフラとして考えるならばスペースXのイーロン・マスクという選択はあまりにも不適格でした。安定を求めるTwitterに、冒険を試すイーロンは正に油と水です。僕の意見を立証する様にイーロンは改悪し、ユーザーも反応しました。

 

 今、イーロンはTwitterのロゴや名前すらも変えようとしています。流石にやり過ぎですし、そろそろ彼を船から降ろすべきだと思います。が、これも一つのTwitterの宿命でもあると思います。

 

 考えてみれば、MixiやLINE以降、遡れば2ちゃんねるニコニコ動画以降、日本は新しいSNSを国産で作ることはありませんでした。InstagramTwitterも、剰えTikTokさえも外国のSNSです。外部のSNSを社会インフラにした末路がコノザマです。だったら、どこの会社でも良いから国産SNSを作るのはどうなんでしょうか。それこそ、今がその丁度いい機会なんじゃないでしょうか。

 

シンギュラリティ・ツイッタラー

 

 この頃、巷ではChatGPTが流行っているようで、アチコチで流れてくるものだ。やれ「ChatGPTを論破した」だの、やれ「ChatGPTでExcelが楽になった」だのと。世の中の技術の進歩は、正に神のごとく飛躍的で、またAIの脳はいつか神になろうとしているのかもしれない。

 

 Takuya Kitagawa/北川拓也 on Twitter: "近年のAIの進化は実は理解されていない。 ChatGPTを筆頭に、信じられないレベルでAIが進化している。 そう、本当に信じられないレベルなのは、なぜAIがこんなにも「急激に」質が良くなったかを、誰も説明できないからだ。 おそらく発明した研究者本人たちですら。 どういうことか。 1/n" / Twitter

 

 なんでも、AIがこうも進化したのは所謂「相転移」と言う現象らしい。詳しく存じ上げないが、上の北川氏のツイートで説明される通り、「量」がある一定のラインで「質」を変えてしまうのだ。

 1個の原子では水が氷になる、という現象はおこらないが、10の23乗の原子があれば、水は氷になる

 北川氏の具体例が正しく良い例だったので引用させて頂く。これでも分からない人の為にもっとわかり易く言うと、1人では「ただの生徒」でも30人集まればそれは「クラス」なのだ、といった具合だろうか。

 

 大規模言語モデル(以降;LLM)もこの相転移が見られたらしく、ある一定のデータ量を超えた途端に、最初の頃には不可能だった性能を発揮し始めたという。

 

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引用元: Characterizing Emergent Phenomena in Large Language Models – Google AI Blog

グラフを見れば分かる通り、約1000億パラメータ付近で急激に性能が向上しているのだ。

 

 OpenAIは15億パラメータのGPT-2を作った後、今度は1750億パラメータのGPT-3を作り始めた。しかしながら、開発段階で、このような素晴らしい能力が生じる事を誰が想像もしてただろうか?

 パラメーターが少ないうちは「人工無脳」なんて言われていたLLMがあっという間に、便利な道具になり、根暗ナード共のお喋り相手になり───それは、まるでserial experiments lainの世界観の様に────なんて、誰が想像出来ただろうか?

 ツイッターでは、もう既にAI絵師やDeppLが出た当初のように、「ホワイトカラーを雇う必要が無くなるのではないか」なんて議論もある。

 

 だがしかし、私はそこに「待った」をかけたい。本当に消えるのは仕事ではないということだ。

 仕事は、やはり仕事である以上、人間の方が効率が良いというのに尽きるだろう。資本集約型のAIによる生産・サービスよりも、人間による労働集約型の生産・サービスの方が利潤率自体は高いのだ(実際、AIでも出来そうな事を企業は中々DXせず非正規雇用にやらせているのが日本の現状だ)。マルクス経済学で言うところの、資本の有機的構成の高度化に伴う利潤率の傾向的低落法則だ。

 では、何が消えるのか。それはやはり私はツイッタラーだと思う。そもそもを言えば、我々が日頃タイムラインで見るツイートと言うのは、勿論個々人の個性に溢れるものもあるが、基本的には普遍的で、どこかで見た文体、スラング、或いは構文の様なものなのだ。

 例えば、「サイゼリヤが美味しくない」だとか、「女はバカだ」とか、逆にかえって「男はヤリモクでキモいだ」とか、まあ挙げれば枚挙に暇がない。とりあえず言えることは、「バズってるツイート」と言うのはどこか皆同じなのだ。

 そこで出てくるのが、LLMだ。 GPT-3はインターネット内のほぼ全てのテキストの内、前処理をした570GBを学習している。つまり、GPT-3はインターネットを全て記憶しているようなものなのだ。その知識は360GBほどのモデルサイズであり、A100なら5台あればVRAMに全て展開可能だ。GPUの強烈な大規模パラレル行列演算によって、インターネットのほぼ全ての知識を頭の隅に置きながら思考できるわけだ。

 と言っても、GPT-3はTwitterのツイートまでは学習していないらしい。しかし、理論上は可能であり、恐らく実行も容易いというわけだ。要するに、Twitterバズ製造機マシーンが作れてしまうのだ。

 そうなると、もう態々質の悪い文学をネット上で素人がやった所で意味がない。僕らが乙武洋匡で炎上商法するのも、異性叩き、冷笑、愛くるしい子供の話、恋愛ポエム、哀しく同情を呼ぶ自分語り、毎年クリスマスになると伊藤誠ネタがバズる、マツコデラックスが言ってるおめでたい一言……。そんな他愛もない事、全部全部がもうAIには勝てない。バズるのはAIが淡々とするツイート。もし仮に君がアルファツイッタラーだとして、突然Twitterを辞めて、しかしそのアカウントはAIに任せたとしても、君のアカウントはバズり続けるわけだ。

 私は預言しよう。近い将来、AIアルファツイッタラーが誕生する。実際、しゅーまいくんだとか、あかり大好きbotだとかその土壌はあった。皆、ネタツイも好きだし、猫の画像やHな絵も好きだけれど、同じくらい自動ツイートの面白おかしいのも好きだった。APIが有料化するとかで難しいかもしれないけれど、そういうのが現れるのではないかという気がする。そして、そういうアカウントが現れても、本当にAIだとは思わない人間も一定数いるだろうし、言われなければ賢ぶっている人間も分からないと思う。

 私は実際「しゅーまいくん」の垢を自動ツイートでないと思っていた友人を見たことがあるからだ。

上田物語

上田物語

 

□登場人物紹介□

上田(よすい)……主人公。大阪梅田にひとり暮らしの大学生。雲丹ちゃんと付き合っている。浮気している。ネット恋愛をめちゃくちゃしてる。

 

雪見……上田のネッ友にして数少ない心の友。兵庫県?に住んでいる。ゲームが好きで、グループ通話(会議)をしながらよくゲームをしている。

 

雲丹ちゃん……上田の彼女。メンヘラ。滋賀県に住んでいる。

 

とっけー……上田のネッ友。熊本県に住んでいる。

 

たこサン……とっけーのネッ友。彼女とガールズバーのことで揉めた。

 

ねかまる……福岡に住んでいるゴスロリ中卒女。

 

あいるぅ……東京に住んでいる上田のネッ友。


1.

 

 

 

「ごめん

さよなら

 


そんな内容のLINEが送られてきた直後、後ろを振り返ると、暗がりから彼女の雲丹ちゃんが現れた。雲丹ちゃんの小さな手には、多分肉を切る用の鋭利で、大きな包丁が握られていた。

「…ま……」

命乞いをする暇もなかった。突進してきた雲丹ちゃんの包丁が心臓に直撃した。いや、これ結構痛いんだな。視界が徐々に薄れ始め、様々な追憶が流れた。これが走馬灯なのかな…。あとでツイートしとこ。

 


  目を開けると、自宅にいた。時刻は午後11:59。

「…は?」

当惑していると、光る端末の画面からとっけーさんの声が聞こえる。

「アレ?よすいさん死んだん?w」

さっきまでのは何だったんだろうか。確か、昨日の夜もとっけー、雪見、あと俺の彼女の雲丹ちゃんと会議していた。暫く画面を眺めていると、とっけーさんがたこサンの話を始めた。

「たこサンと昨日通話したんですけど、彼女がガールズバーに入るだの入らないだので喧嘩してたらしいんですよ笑 それでキレた たこサンが最後通牒を送ったら彼女が…」

また同じ話だ。昨日の夜もこの話をとっけーさんがしていた。

「とっけーさん、昨日と同じ話してるのは”ナンセンス”ですよ」

条件反射で水を差した。

「何言ってるの?世界観くん?とっけーさんこの話は一度もしてないよ。」

雲丹ちゃんが言う。

「たしかにとっけーさんはよく同じ話を何回もするけど今回に限っては初めての話だと思うよ。おまえどうかしてるぞ。」

雪見も反駁した。おかしい。確かに、昨日の夜もこの話をしたはずだ。しかし、三人とも記憶にないようなのだ。状況を理解出来ないので暫くの間は静観に徹することにした。

  しかし、雪見のシャドバに対するキレ方、とっけーさんの話題、雲丹ちゃんのレスポンス。すべてが全て、昨日の夜と同じ内容。いつか見た記憶なのだ。何かがおかしい。何かが引っかかる。しかしまあこれは夢か何かなのかもしれない。とりあえず今日のところは寝るとしよう。会議を抜けて上田は床についた。

  目が醒めると、既に夕方だった。今日はパチンコにも行かずダラダラ過ごすか。そう思いながら、コンビニに行ってタバコを購入し、Twitterでなんでもないことを呟きながら散歩していると、夢で出てきたところと同じ場所に行き着いたしまった。人気のない、静かな路地だ。

「ここって確か…」

すると、雲丹ちゃんからLINEが送られてきた。内容は……

 


「ごめん

さよなら

 


「………ま…まさかな」

振り返ると、暗がりには雲丹ちゃんの姿があった。その手には確かに夢で見たものと同じ包丁があった。ヤバイと思ったのもつかぬ間、突進してきた雲丹ちゃんが上田の溝落ちに包丁を突き刺した。上田が倒れると、雲丹ちゃんが馬乗りになって包丁をザクザクと突き刺した。上田はその怨嗟に満ちた眼差しを眺めながら絶命した。

 

 

 

 


2.

  目を開けると、また自宅にいた。そして時刻は、午後11:59。よくよく日付を見たら本当に昨日(10/21)なのか。つまり、これはアニメや小説でよくある、”死に戻り”っていうやつか。まさかな。

「アレ?よすいさん死んだん?w」

またも明るい画面からとっけーさんの声が聞こえてくる。これは輪廻の地獄で、この予期された死からは逃れることが出来ないのだろうか。いやしかし、とりあえずやれることはやってみよう。

  「わるい、今日気分悪いから会議抜けて寝るわ。おやすみ。寝落ちもなしで。」

上田はそう言ってスマホの電源を消して荷支度を始めた。明日の夕方の大体18:50とか40あたりだった気がする。その時間に俺は雲丹ちゃんに殺される。しかし、何故だ。確かに他の女とコッソリ寝落ちやエロイプはしたけれど、それは彼女にはバレないはず。それとも彼女が本当に狂った化物なのかもしれない。動機がなんにせよ、スマホの電源を切って始発の電車で……そうだな、九州にでも行こうか。なるべく遠くに行ってみよう。確か雲丹ちゃんは滋賀住みのはずだ。そこまでは流石に来れまい。上田はモンスターエナジーを一気飲みすると、二泊三日分の荷物を準備して、重い重い玄関の扉を開けた。

  とりあえず財布の中身も心許ないし鈍行で行くことにした。始発の神戸線に乗った。本を読んだりTwitterをしたりして時間を潰しながら色々な電車を乗り継いだ。途中岩国で安いコンビニ弁当を食べた。

  「次は、博多〜博多〜」

漸く博多駅に到着した。とりあえず今日のところは何でも良いから寝床を探して、明日はどうせだしちょっと観光でもしよう。そう思いながら、プラットホームを歩いていると、見るからにTwitterでよく見た“あの女“が目の前にいるのだ。

「おまえ、ねかまるだろ!?」

思わず声をかけると、その女も吃驚仰天した顔で振り返った。

「……よすい?なんで此処に?」

やはりそうだ。どういうわけか知らないが、フォロワーのねかまるとエンカウントしてしまった。二人で暫く立ち話をしていると、やはり、このタイミングで雲丹ちゃんからLINEが送られてきた。まあ、内容はもう言うまでもないだろう。

「雲丹ちゃんから?とっけーさんが言ってたけど、雲丹ちゃん今めっちゃヘラってるらしいじゃん。」

「やっぱりそうか…。」

しかし此処は福岡博多駅。彼女が来れるはずはない。ここは安全だ。とりあえずねかまると飯でも食って、快活クラブか何かで寝るとしよう。そう思った矢先、突然奥のホームから耳を裂くような金切り声が聞こえてきた。

「その人痴漢です!!!誰か捕まえて!!!」

声の方に目を向けると、上田に向かって、正にその大柄な痴漢犯が突進してきていたのだ。

「……まっ……」

痴漢犯のダイナミックな体当たりに弾き飛ばされ、上田は線路へと打ちつけられた。線路へと落ちたタイミングで、丁度上田の元へ大きな鉄の塊がやって来て、上田を通過した。ねかまるさんの裂帛の叫び声が、博多駅に木霊した。

 


3.

  「そういえば、とっけーさんが言ってたけど、おまえの彼女ヘラっているらしいよ……あ!上田上だ!気をつけろ!!」

「ま、まて……」

池袋駅では、上から鉄骨が落下してきて丁度話していたあいるぅの目の前で死んだ。飛行機で熊本に行ったら、とっけーさんの前でとっけーさんのリア友に日本刀で突き殺された。新潟に行ったら、駅のロータリーに突っ込んで来た暴走バスに轢き殺された。では、家に篭ったらどうなるだろうかと思ってみたら、隠密に侵入してきた雲丹ちゃんに気付かず、やはり刺殺された。

  畢竟するに、俺は何をやっても10月22日の午後6:40-7:00頃に死ぬ。これは現実ではなくてフィクション、いや浮世からは逸脱した異次元なのだ。何時からそこに迷い込んだのかはわからない。そして、これは俺の罪に対する償いなのだ。無限に死に続けるという無限地獄なのだ。いや、そもそもいつから「現実世界が地獄でない」という確信が生まれてきていたのだろうか。初めから俺は地獄にいたのかもしれない…。そうだとしたら助かる方法はないのか。

   虚ろな表情でまた迎えた10/21の午後11:59。俺はまたとっけーさんのオチのない話も、雪見の同じキレ方も、雲丹ちゃんの居酒屋の安酒の様に薄いレスポンスも聞かないといけないのか。ただでさえ約束された死が待ち受けているのに、この同じことが、本当に1から10まで同じことの繰り返しがやってくるのだ。もう耐えられない。どうすれば──。

    今にも死にそうな気持ちと顔で──実際既に何回も死んだが──、スマホの画面を見つめる。そうだ。確か、ねかまるさんもあいるぅも共通してとある事を言っていた。

「「とっけーさんから聞いたけど雲丹ちゃんがめっちゃヘラっている」」

しかしながら、とっけーさんだけは、とっけーさんだけは熊本で会った時にこの事を言っていない。コレが何を意味するのか。上田は真理に辿り着いた気がした。

  つまるところ、とっけーさんが彼女に唆したのだ。多分ではあるが、この後俺が抜けた後も雲丹ちゃんと雪見ととっけーは話す。その際にとっけーさんが、俺が浮気をしている事実を暴露。それによってヘラった雲丹ちゃんは俺を刺殺する。そういうことなのだろう。では、何故雲丹ちゃん以外の要因でも死ぬのだろうか。そこが疑問だ。

  だがとりあえず、今回はどうせ死ぬのだ。「実験」ということにしよう。会議で寝たフリをする。俺が寝ていると思ったとっけーさんは恐らく次々と俺のあることないことを、雲丹ちゃんに吹聴するのだろう。名付けて死んだふり作戦だ。もう何回も死んだけど。

「やばい眠い…」

明らかに眠そうに重苦しい声でこんなことを何度か唱えた。数分後、ニセの鼾をかいて本当に「寝たこと」にした。さぁ、鬼が出るか蛇が出るか…。

「アレ?よすいさんガチで寝てね?」

とっけーさんは軽快な口調で俺が寝たことを確認した。

「フフッ」

「いや、コレマジの鼾じゃね笑、てかうるさ」

雪見や雲丹ちゃんも続けてレスポンスを始めた。

「鼾といえば、知ってます?たこサンの彼女の鼾がヤバすぎて、たこサンは彼女と寝落ちする時イヤホン外して寝てるし、この前泊まった時は別室で寝たらしくてですね…」

ここは、最初の死に戻りと同じだ。なるほど、結局鼾の話題に繋がるのか。

「はぁああ、つっかえ……大体このアレがさ…ホントクソゲーだわ」

雪見のシャドウバースのキレ方も全く同じだ。

「ところで…なんですけど」

とっけーさんが何やら言い始めた。

「雲丹ちゃんはよすいさんが他の女と寝落ち通話とかエロイプしているの知ってるの?」

「え、世界観くんが…?本当に…」

「本当だよ。」

「とっけーさんそれさ、一応よすいさん残ってるけど言っていいのそれ?」

気まずい雰囲気に雪見が水を差した。

「いやいいよ、どうせよすいさんは寝てるし。この前雲丹ちゃんがいないときに話してたし証拠だってあるよ。ホラこれ。」

とっけーさんは上田とのトークのスクショを添付してすぐに送信を取り消した。

「悪いことは言わないからさ、こんなやつと早く別れた方がいいよ。ちなみにだけどこれいつもやってるからもうアイツ病気だよ…。俺も他人のこととやかく言える口ではないけど。」

「え………え………」

「僕ちょっとApexしてくるんで一旦抜けますね。」

気まずさを感じた雪見は会議を抜けた。

「まあ、よすいさんが寝ているから言いますけど、毎回浮気してるし、金は返さないし、別れるときに彼女にレスバトル仕掛けるし、ね?コイツロクなやつじゃないからね。雲丹ちゃん良い子だしこれ以上こんなやつと付き合って徒労に暮れるよりかは、リアルとかで恋愛して他の良い人見つけたほうがいいよ。俺から言えることはそれだけです。」

「……え……」

 


  雲丹ちゃんは終始驚いている様子だった。恐らく、上田が会議を抜けた後毎回これが繰り返されていて、これに激昂した雲丹ちゃんは包丁を持って俺の自宅に行き、例のLINEを送り、明日の午後6時40-午後7:00に刺殺する。それがこの物語の”クリプトレシ”だったのか。

  それならば話は早い。今回はとりあえず殺される。そして、いつもの時間と場所にリスポーンされたらまず最初にすることは、とっけーさんのご機嫌取りと時間稼ぎだ。個通にでも呼び出して永遠に語り続けたら、雲丹ちゃんにさっきの様な讒言をすることもないはずだ。そうすれば、俺は今度こそ死ぬことはない。完膚なき計画だ。

 


  上田は久し振りにあの人気のない路地にいた。

「待ってたぜ」

上田が後ろに振り返ると、大きめの包丁を持った雲丹ちゃんの姿が、やはり其処にはあった。上田はまた死んだ。

 


4.

  上田はまたいつものリスポーン地点にいた。暗澹とした部屋の中で、また上田のスマホだけが光を所持している。

「アレ?よすいさん死んだん?w」

またとっけーが同じことを喋っている。

「とっけーさんちょっと個通しよ。」

「へ?あ、まあいいですけど…」

「世界観くん、私との寝落ちは…?」

「ごめん。とっけーさんと大切なことを話したいから…明日しよう。」

早急に会議を抜けてとっけーさんに個人通話をかけた。

「で、何の用?」

いざ呼んだはいいが、話題に困った。しかしとりあえず時間を稼げれば良い。

「実は最近血便なんだ。これってなんかの病気なのかな?コロナの後遺症?」

「……は?何いってんの?ガチで言ってるのそれ??」

こんなふうに無理矢理意味もない話をし続けた。朝5時頃、とうとう負けたとっけーさんが寝落ちした。清々しい朝だ。

  なんとなくテレビを付けた。天気予報では、明日には大型の台風が本州に上陸するだとか、今日は束の間の晴れだとか言っていた。そんな他愛もないのを見ていたら、うっかり上田も眠りに落ちてしまった。

 


  上田が目を醒ますと、もう既に午後6時半だった。一瞬驚いた。しかし、今回は死にはしない。大丈夫だ。そう自分に暗示させた。

  とりあえず布団から一歩も動かずにダラダラすることにした。LINEを返し、声ともやツイッターを眺めていた。

  午後6時58分。もう直ぐだ。もうすぐで待ち侘びていた瞬間が来る。午後7時になっても死ななかったら一蘭に行こう。

  そう思った矢先、雲丹ちゃんからLINEのメッセージが届いた。上田は慌てて内容を見る。

 


「ごめん

さよなら

 


  「まじかよ」

ガラガラと窓が空いて、其処から包丁を持った雲丹ちゃんが現れた。身軽な彼女は上田の部屋のゴミを華麗に飛び越え、上田に飛びかかった。上田はまた死んだ。

 


5.

もう何度目かもわからないいつもの場所と時間だ。午後11時59分。大阪梅田の自分の家の自分の部屋の布団の上。豆球だけがつく暗い部屋。光るスマートフォン。聞こえるとっけーさんの声。

「アレ?よすいさん死んだん?w」

  聞き慣れたフレーズがまた聞こえてきた。正直もう聞きたくない。

  ただでさえメンタルの弱い上田の精神は、完全に擦り切れて弱っていた。前回でやっと暗夜行路を抜けられると思っていただけに、そのショックは甚だ大きく、それは上田の心に対して、致命傷を追わせた。

しかし、もう死力は尽くした。何回も死んだけれど。もう考え得る限りことは全て行ってきた。もう俺は死ぬって決められているのだ。虚無に浸って、自分の無力さを嘆いた。「ごめん、もう寝る」

  上田は涙を堪えた声でそう言って会議を抜けた。

「もうたくさんだ…。」

  暗い部屋でブツブツと泣き言を吐き続けた。また今日も死ぬ。あの苦痛をまた味わなければならない。もう何回死んだのだろうか。考えてみれば、何回かは実験という名目で態と死んだこともあった。もう自分の命の重さの概念すら、上田の頭の中には消滅しかけていた。

  どれくらい経っただろうか。時計の針すら、ボヤケて見えなくなっていた。

(テテ テテテ テテテン♫)

   誰かからLINEの着信が来ていた。上田はおかしいと思った。何回も死に戻りしてきて、今までこんなことは起きなかったからだ。こわごわとしながらスマホを見ると、電話してきたのは雪見だった。益々おかしく感じた。しかし、とりあえず出てみることにした。

「あ、よすい?大丈夫なん?」

雪見はいつものやや辛辣な態度ではなく、ひどく心配している様子だった。

「大丈夫じゃないよ。俺今日死ぬ。」

「あーやっぱり?なんかいつもの死ぬ死ぬ詐欺の比じゃないくらいヤバそうだったから、ほんとに少しだけ心配になっちゃったんだよね。僕でよかったら助けになるけど?」

「言ったところで信じてくれるかどうか…」

「何言ってんだよ。おまえいつもそんなんだけどさ、僕一応よすいさんのことは友達だと思ってるよ?友達ならさ、どんなことだって信じるよ。信じるか、信じないかで迷ってるなら言ってほしい。とっけーさんや雲丹ちゃんが信じられないことでも、僕は信じると思うよ。」

画面の奥から聞こえてくるその声は、上田にとって、今はどんな貨幣よりも、どんな神様よりも、信用にたるものだった。

  上田は全てを話した。死に戻りのこと、今まで何回も死んだこと。生きようとして失敗したこと。

「うん。なるほど。突拍子ないことだけれど、とりあえず信じよう。それで今日の夕方午後7時頃に死ぬと…。」

雪見は驚きもせず、何やら考えているようだった。

「どう思う雪見?」

「どうするって言われてもなぁ…。牧瀬紅莉栖や浅井ケイのような明晰な頭脳の持ち主はおろか、ダルやドクのような発明家もいないし…状況としては最悪じゃないか?」

「……。」

上田は黙ってしまった。そのとおりだ。状況は最悪だ。確かに、雪見は助けてくれる。しかし、雪見に何ができる?もしできたとしても、もし今回失敗したら次のときには雪見には記憶がないはずだ。

「つまり俺はナツキスバルや鳳凰院凶真よりヤバイのか?本当に孤独な観測者じゃないか。まるで。」

「そうなるね。僕の力でできることも限られている。しかし──」

雪見は大きく息を吸った。

「策がなんにもないわけではない。」

「具体的には?」

「そうだね。その前にまず今の状況を軽くおさらいしよう。よすいさんは今日の夕方死ぬ。今まで何回も死から逃れようとしたけれど、雲丹ちゃん以外の事象で結局死ぬことになった。また、雲丹ちゃんによすいさんの浮気を指摘して間接的に殺したとっけーさんを雲丹ちゃんから切り離した時も、同様に死から逃れることは出来なかった。」

「うん。そのとおりだ。」

「此処から言えることは一つ。よすいさんはどうやっても結局同じ時間に死ぬことになる。それは誰かがこうしたからとかみたいな原因と結果の関係ではなく、絶対的で独立した事象として存在する───いや、そもそもよすいさんがこの世界に生まれたという原因が、今日死ぬという結果に帰結しているのかもしれない。」

「え?だとしたら、俺は絶対に死から逃れられなくない?どうすんだよ。」

雪見は話を続ける。

「ご名答。しかし、逃れる方法が一つだけある。タイムマシンを作ることも、魔法を使うことも出来ない凡人な僕らにもできることがある。それが、偽装殺人だ。細かい説明は省くけれど、とりあえずどうせよすいは死から逃れられないのだから、世間では”死んだこと”にするんだ。認識のすり抜けだよ。上田直輝は今日で死ぬ。しかし、お前そのものの肉体は、別の人格として、別の人間として生きることになる。それが僕の策。どう?」

雪見はかなり早口で一気に作戦を説明した。上田は呆気に取られていた。しかしこれならいけるという確信と自信も取り戻しつつあった。

「詳しい作戦を言うと、まず雲丹ちゃんによすいが態と刺される。そのときちゃんと心臓近くを刺してもらう。それであらかじめ胸に隠しておいた、血糊が溢れ出るようにする。そうしたら、雲丹ちゃんはよすいが死んだと思うだろう。そのタイミングで僕が現場に駆けつけて通報する。よすいはその間に出来るだけ警察の目が行かないようなところに逃げる。その日の夜のうちに逃げるところまで逃げればあとはお前のやり方次第だな。まあ、そこで失敗すれば、またやり直せばいい。その時は僕をまた頼ってくれ。必ず助けになるから。」

「疑問なんですけど、その場合、警察がちゃんと捜査したら血痕とかでバレると思うんですが。」

「はあ?よすいお前天気予報見てねぇのか?明日は数十年に一度レベルの巨大台風が本州に上陸するって知らんの?証拠は全部きれいサッパリ流れるだろうよ。そしたら、残るのは人的証拠。つまり、雲丹ちゃんと目撃者である僕だけが証拠だ。」

「なるほど…。」

「とりあえず、偽装殺人の為には僕が直接出向く必要があるから、明日急いでそっちに行くよ。よすいはできるだけ多くのお金とかを用意しといて。あとはこっちがどうにかするから。とりあえず明日そっち行くわ。じゃ、おやすみ。」

上田も寝ることにした。明日、いや明日じゃなくて、もう一回してもいい。さらにもうその次でもいい。なんとしても成功して、絶対に生き残ると上田は心に誓った。

 

 

 

6.

  少女は鞄の中の、台所から取ってきた大きめの包丁を確認した。私以外に好きな人がいるなら殺しちゃえばいい。私も一緒に死ねば、二人は一生二人きり。そんな病んだ思考で、遂に大阪まで来てしまった。剰え、偶然コンビニでタバコを買う上田を発見してしまった。これは天命なのだと自己暗示し、上田を尾行した。

   上田が人気のない小さな路地に入った。今が好機だ。少女は包丁をギュッと握りしめた。

「見たまえ!!!」

  上田は突然振り返って、少女に笑顔で声をかけた。だが、その笑みはすぐに消え失せた。少女は彼に突進して心臓を一突きで刺したのだ。彼の服に深紅の血が滲み始めた。

「ガハッ!」

上田は、包丁が刺さったままよろけながら雲丹ちゃんを押しのけ、一歩後方に下がってそのまま倒れた。その瞬間、少女の数m後方に人影が現れた。小柄な成人男性だった。「うわあああああああ!!!!!上田ぁああああああ!!!!!」

彼は大声で叫んだ。母親の顔や学校の友達の顔、好きだった先輩の顔が、少女の脳裏に過ぎった。───死にたくない…。

彼女は凶器を捨て、無我夢中で走って逃げた。ごめんなさい。ごめんなさい。心の中で謝りながら走り続けた。

 


  それから、その少女は殺人の疑いと銃刀法違反の疑いで逮捕されたが、不起訴となった。というのも、当の死体は一向に行方不明であったからだ。殺害当日の次の日にやって来た台風に飛ばされたとか、警察が隠しているとか、実は暴力団が関係しているとか色々な憶測が飛び交った。

   また他方で、上田直輝生存説も唱えられ、掲示板やTwitterでは連日祭りとなった。上田はフィリピンに渡ったという説。上田はイスラム国に参加しているという説。令和一奇妙な事件として、語り継がれることとなった。

   

「よすいさんは今頃何してるんですかね?w」

「さあ、今頃女といるでしょ。」

匿名の人間同士が交わる電脳世界では、今日も彼のハンドルネームが呼ばれるのであった。

 

 

 

おしまい