今から丁度百年前の1923年9月の初旬、関東大震災後に起きた在日朝鮮人及び無政府主義者等の虐殺事件はよく知られている。
その模様を連日投稿しているのが、百年前新聞(@100nen_ )である。このアカウントは百年前のその日の出来事を今のニュースアカウントの様に投稿するものである。その内容が合っているのか疑わしいモノは多少あるにしても、当時の出来事が恰も実際に報道されているかのようにタイムラインに流れてくる様は、見ていて大変興味深いものである。
今日もそんな気分で百年前新聞の投稿を見ていたところ、リプライ欄に不可解なアカウントを見かけたのである。そう、あまりにも不可解なアカウントを見つけたのである！本稿では、そのアカウントの個人的な考察を述べたいと思う。
不可解なアカウントというのが、このンタロン・イビッパンなのだが……とりあえず返信の内容を和訳してみる。
「Wait, who are the Koreans attacking??(待って、韓国人は誰かを攻撃しているの？？)」というHurbanzのリプライである。恐らく彼は朝鮮人虐殺について知らない外国の方だとお見受けする。それに対するンタロンの返信が「Korean anti-japanese racist criminals were attacking Japanese people.(韓国人の反日差別主義の犯罪者が日本人を攻撃していた)」である。内容があまりにも荒唐無稽であるし、「(ネット保守派の)歴史修正主義者なのか？」と一瞬思ったが、それ以上にこういう文に見覚えがあった。英語の授業の課題などでdeeplやGoogle翻訳を使った時に生成される英訳文である。違和感を抱き、彼のプロフィールに飛んでみることにした。
まず、プロフィール文から可笑しい。もっと言えば、ハンドルネームもそう言えば可笑しい。なんで「ン」で始まって「ン」で終わるのだろうか。しりとり最強にして最弱の単語？アイコンは第二次世界大戦中の日本の占領領域である。
それはさておき、序文からAI臭が半端ない文章である。
私は20代で、現在のビジネス、産業、経済、政治について非常に高い知識を持っています。
↑しかし歴史と国語は赤点のようである。
「、」の使い方も、「です・ます」にしなくていいところでしてしまうのも、翻訳の特徴ままである。
私は非常に頑固なナショナリストです。
↑あなたは異常にウンコなスペシャリストです。
日本政府には、35歳までに3人以上の子供を産むことを義務付ける法律をつくってほしいです。そうでなければ、すべての権利と社会的アメニティを取り上げるべきです。
私は反欧米、反中韓の人間だ。
↑
ほぼ全世界敵に回してるぞ！？
ツイート欄も見てみよう。
「あっ……(察し)」
見るからにリポストしている内容が内容である。ネット保守論壇の真右の真右である(彼らは右への斜行癖がある。しかし本人達にとっては至って真っ直ぐのつもりである)。ここでは、リポストされている投稿の内容の是非については読者のご想像にお任せするが、所謂保守派の投稿である事は間違いではないだろう。
遡って見ても、さっきのようなAI生成の様なクソリプはあっても、日常の呟きの様なものは見当たらない。メディアのポストはゼロであり、いいね欄はリポストとほぼ同じである。数少ない本人自身のポストは、固定ポストのフェミニスト批判を始め、朝鮮学校批判、djsoda批判などを主に行っている。
もうこの際、彼の悲惨な日本語翻訳については触れないでおこう。
因みに彼はレスバトルも行う。ここでは彼の論破集を一部お見せしたい。
「文盲め」は、彼の必殺技である。一説には、西村ひろゆきもこれで論破されたという。
「それはあなたがマゾヒストだからだと思う」→カッケェ……
「あなたは日本最悪の犯罪者だ。」→麻原彰晃、植松聖、宮崎勤、青葉真司「………。」
これらの論破により多くの人間は沈黙し敗北している。人工知能が人間を追い越す……とは、まさかこの事だったのだろうか？
以上のンタロン君による麗筆の数々を見て頂ければ分かる通り、彼の中身は二つの可能性がある。一つには、外国籍の人間で翻訳機を駆使している人間である。二つには、Chat-GPT等の生成AIである。どちらにしても、態々、非常に頑固な保守派の投稿を協賛したり、保守に批判的な人間に対してマゾヒストの様なレスバトルを仕掛けたりする意図とは何だろうか？
一つの答えとして、ンタロウ君は中国や韓国、欧米、ロシア等の他国(ほぼ全世界！？)が、日本のネットの世論を扇動する為に動かしているアカウントの一つではないだろうか、と考えられる。勿論彼一人では何も成せないが、彼の様なのが数百体いれば世論を動かせる可能性はある。
まず、中国やロシアが右翼を支援したとしても、寧ろ対外リスクが高まる一方であり、彼らからすれば損失の方が大きいから、ンタロン君を運用するのは合理的ではない。ただ、彼らが日本との交戦を望んているとしたら、保守優勢になり憲法改正となれば思ってもいない好機である。また、強硬な保守派によって排外主義が広まれば、韓国や米国といった同盟国との国交に亀裂を生ませることになる。「敵は各個撃破せよ」は戦いの原則である。
一方で、米国にとっても世論を右傾化させることは、場合によっては好都合になる。端的に言うと、辺野古基地移設問題や憲法改正等が進み、米国の手駒が強化されるわけである(ンタロン君は辺野古基地移設についてもリポストしている)。今現在の国際政治のゲームマスターである米国としては、日本は角行に値する。日本を成らせて、竜馬に出来るのは好都合中の好都合である。
最後に考えられる可能性として、日本の保守派の自作自演がある。だとしたら、非常に情けない話である。嘗て先人が命を賭して護った御国が、まさかAIによって愛国を謳われる虚城になってしまうとは……。
百年前、我々の先人は過ちを犯した。無実の罪である朝鮮人の方々や無政府主義者の方々を殺害した。先人達が過ちを犯したのは、震災によるパニックや蔓延る差別意識、そして真偽不明のデマに騙された事が原因である。技術革新や人権意識が高まったと言われる今日でさえも、差別や悪質なデマは消えない。パニックは多少仕方がないにしても。騙されない為には、リテラシーが必要である。
誤っても、人間なのかすら怪しいアカウントの投稿を信じないように……。偏った思想に誘導するものかもしれない。因みに、このブログのタイトルはAIに考えさせたものを英訳し、更に邦訳したものである。
