「おい、手を上げろ。」
覆面の男がナイフの刃先を、レジの女性店員に向けて脅している。その怒声は低く、店内の空気が一瞬で重苦しくなった。女性は声を震わせながら、レジからお金を出そうとしている。店長も、他の従業員も何も手を出せず、ただ固唾を飲むのみだ。
俺は隣のレジで中華マンと缶麦酒を購入しようとしていたが、コイツのせいで購入ができなくてイライラしていた。
「チっ、あまり目立つマネはしたくねんだけどなぁ」
俺はマスクの下で小言を呟くと、横のレジにいる強盗に歩み寄った。強盗は俺に刃を向けた。
「動くんじゃねぇ。ぶっ殺すぞ。てかテメェ早く金出せや。」
「はっ、……はわ……」
女性店員は涙目になりながらレジに現金を置いた。
「すみません、覆面の所にカメムシがついてますよ。」
俺は男に向かって言った。
「はっ!?ハァ!?」
男は当惑して、覆面を外して確認し始めた。
「──俺の前で余所見すんなよマヌケ」
すぐ様上段裏回し蹴りでナイフを蹴飛ばした。武器はクルクルと舞い上がって、Charlotteの作中以外で買ってる人を見たことがない、レジの煙草の上にある御中元みたいなクッキーの箱に直角に刺さる。俺はすぐ様返す刀で強烈な左正拳突きで相手をサンドウィッチの棚まで吹き飛ばした。
「ンノヤロォ……」
男は最後の力で尻のポケットからもう一つのナイフを取り出そうとしたが、レジ前に置いてある少年ジャンプを飛び道具の様に投げてその腕を麻痺させ、トドメの膝蹴りを顔面に喰らわせ、男を“殺”(サツ)した。
「すっげ、大谷翔平より速いやん」
すっかり俺のオウディエンスと化した客達は俺の少年ジャンプ投げに思わず声を出した。
レジの女性店員はあまりの美しさに涙を流しながら頬を赤らめていた。全く、これだから嫌なんだよな。俺は店員のおねぇさんの後ろの煙草棚の42番を指差した。
「おねぇさん、安心して大丈夫ですよ。パーラメントメンソール、奢りますよ。」
「………私、未成年です、、、」
店内がドッと笑いに包まれた。